「世界は残酷だ」

この言葉が、私の最初の言葉だった

創られた存在だった私
牢獄の様な世界で生まれ
牢獄の様な世界で日々を暮らしていた私

世界は突如現れた魔王により、恐慌を極めた
しかし世界は諦めない
いや、人が諦めなかった

当時あった最高の技術を以って、私<達>は生み出された

『 対魔王存在 』

『 Bloody MARY project 』

対魔・殺戮天使(バトル・マリア)

人間の中にある魔系遺伝子を弄り

最高の魔力容量

最高の魔力制御力

最高の魔性資質

それらを持つ最高の兵器―――天使
を作り上げる計画

私はその計画の途中で誕生した

――世界を救う名目で始められた計画――

通常兵器が効かない魔王への対策の為、日々繰り返される

救済の為の訓練―――戦闘訓練

愛される存在で在る為の勉強―――殺戮呪式の構成訓練

“聖女”で在る為の道徳―――最高の治癒力と躊躇わない殺害意志

それを学ぶ内に、私は一人だけ取り残された
皆が皆、言葉を発さない中で私だけが“世界”から取り残された
何がいけなかったのか?

笑顔の意味を訊いたのがいけなかったのだろうか?
道徳の講義で、何故魔物が疎まれるのか訊いたのがいけなかったのだろうか?
外の世界、何れ出る世界の事を訊いたのがいけなかったのだろうか?

一人残る私
“世界”に取り残された私

だからディスプレイでの会話以外で、私は誰にとも無く呟いた

「世界は残酷だ」

そして修了するカリキュラム
そして出来損ないの烙印を受ける私

だから私はカプセルの中で眠る
廃棄されるのだ、外の“世界”に出る事無く

眠りに落ちて行く思考
何も考えられなくなる頭

外の世界はきっと“ココ”とは違う
想像する世界
夢の中だけの世界で私は駆け回る
美しい大地
綺麗な空
まだ見た事がない世界を、私は夢見た
だけど、それも今日で終わり
明日にでも私の存在は、この場所から無くなる事だろう

命は亡く

記憶にも残らず

私は、始めから居なかった様に


――死ぬ――


心残りは生きるか死ぬかの外の世界
でも、多分大丈夫
私の姉妹が、きっと何とかしてくれる
だから安心して眠りにつこう

何時か見たかった世界を夢見て

そして望もう、在るか分からない来世を―――……










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